胆石症とは

日本人の10人に1人が胆石をもっているとされるほど胆石症はポピュラーな病気で、食生活の欧米化や高齢化などを背景に年々増加しているとされています。
次に説明する胆汁が流れる通り道を「胆道」と言いますが、胆道に石(結石)ができる病気が胆石症です。結石ができる場所によって「胆のう結石」、「胆管結石」、「肝内結石」と呼びますが、胆のう結石が約80%と最も多く、胆管結石は約20%、肝内結石は約2%と少ないです。

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胆嚢(胆のう)について

胆のうは、胆汁(食事で摂取した脂肪分やビタミンの消化・吸収を助ける黄褐色の消化液で、肝臓で1日に600〜800ml程度つくられ十二指腸に排泄される)を一時的に蓄えておく貯蔵庫のような働きをしています。

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胆のうがもしもなくなった場合でも、胆汁をつくる肝臓や胆汁の流れ道である胆管は残り、食べものの消化や吸収機能への影響はほとんどないと言われています。

胆石症の検査・診断

胆石症の患者さんは、人間ドックや健康診断で腹部超音波検査を行った際に見つかる場合や、痛みを訴えて医療機関を受診し画像検査にて痛みの原因を探るうちに見つかる場合が多いです。いずれの場合でも胆石症の診断には腹部超音波検査が有効で、プローブと呼ばれる聴診器のようなものをお腹に当てるだけなので患者さんへの負担が軽いという利点があります。胆のう内に結石エコーと呼ばれる像を確認して胆石症と診断します。

一方、胆石の種類によってはCTでも診断が可能で、特に胆のうが炎症を起こしている(急性胆嚢炎)ことが疑われる場合はさまざまなことがわかるためCTは特に有用です。

胆のう内に胆石がある方は、胆管の中にも胆石(胆管結石)を合併していることも珍しくなく、胆管に結石がないかどうかを調べるためには、DIC-CT(点滴静注胆道造影CT)もしくはMRCP(磁気共鳴胆管膵管造影)を行うことが必要です。DIC-CTは、造影剤を点滴した後CTを撮影し、画像を3次元的に表示して診断します。ただし、黄疸がある場合や結石が胆のう管や胆管に詰まっている場合はこの検査では評価できない場合もあります。MRCPは、放射線被ばくがなく負担が少ない検査ですが、金属を体内に埋め込んでいる方、閉所恐怖症の方、刺青を入れている方などは検査が行えないことがあります。(MRCPは当クリニックでは撮影することができず、必要な場合は他の医療機関にて撮影をお願いするためのご紹介を致します)

腹部超音波検査

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DIC-CT

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腹腔鏡下での胆嚢摘出術

胆石の手術は、基本的に胆石が入った袋である胆のうごと取り出します。これは、胆のうを残して胆石のみ取り除いても、再び胆石が発生する可能性があるためです。胆のうを取り除く手術は全身麻酔が必要で、以前はお腹を切って(開腹手術)手術を行っていましたが、現在では腹腔鏡下胆嚢摘出術が第一選択となっています。この方法は開腹手術と比較して、傷口が小さく術後の痛みが少ないため、日常生活への復帰が早いことが特徴です。日本内視鏡外科学会の全国アンケート調査(第15回)では、2019年の全胆嚢摘出術(約4万件)のうち92%は腹腔鏡下に行われていました。
具体的には、お腹に5mm(場合により3mm)〜12mmの小さな切り口(穴)を開け、そこにトロッカーと呼ばれる鉗子やカメラなどの通路の役割をするプラスチック製の筒を入れます。お腹に二酸化炭素のガスを注入してすき間をつくり、腹腔鏡と呼ばれるカメラをお腹に差し込み、お腹の中の様子をテレビモニターに映し出します。鉗子と呼ばれる手術器具を出し入れして、従来の開腹手術と同じ内容の手術を行います。

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一方、複数回の手術の影響でお腹の癒着が強い場合や、胆のうの炎症が強く組織の剥離が腹腔鏡下に困難な場合は手術の途中からお腹を開ける開腹手術に移行せざるをえない場合があります。また、胆のう癌を合併している可能性がある場合は最初から開腹手術をおすすめする場合もあり、この場合は大きな手術に対応可能な病院をご紹介いたします。

胆嚢のその他の病気(胆のうポリープ)

胆のうポリープは、胆のうの内側にできる限局した隆起病変のことを言います。胆のうポリープのほとんどは無症状で、検診などで偶然発見されます。胆のうポリープと診断された段階で、全ての方が治療(手術)する必要はありません。治療の対象となるのは、以下のように悪性(胆のう癌)の存在する可能性があるものになります。

悪性(胆のう癌)を疑う所見としては

① ポリープの大きさが10mm以上のもの
② 経過観察の検査でポリープが増大傾向にあるもの
③ 大きさに関わらずポリープの茎が幅広いもの(「広基性ポリープ」と呼びます)
④ ポリープの表面や内部の性状、血流などに特徴的な所見があるもの

などがありますが、総合的に手術の適応を判断しています。

胆のうポリープの治療では、胃や大腸のポリープの様に「カメラでポリープだけを取る」というわけにはいかず、胆嚢摘出手術が必要です。一般的には腹腔鏡下胆嚢摘出術を行い、胆のうを病理検査で調べることで最終的にがんであるかどうかの判断をすることになります。手術前から胆のう癌の疑いが強い場合は、最初から開腹して周囲の肝臓や胆管なども含めて大きく切除を行う必要があることもありますので、この場合は大きな手術に対応可能な病院をご紹介いたします。

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